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【D1GP 第5戦・第6戦】エビスの山で、外国人取材班が初めてD1の洗礼を浴びた話
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【D1GP 第5戦・第6戦】エビスの山で、外国人取材班が初めてD1の洗礼を浴びた話

福島・エビスサーキットで開かれたD1グランプリ2025第5戦・第6戦。年間王者・藤野秀之の2JZ GR86、デビュー週末の齋藤太吾GRスープラ、パドックに並ぶJZX100マークII、そして作業灯の下で夜通し続くメカニックの仕事。全部見てきた。

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山を登る坂道で、まず息が上がった。海の向こうから来た僕らは、ドリフトの聖地に着いた瞬間、運動不足を思い知らされたわけだ。でも土手の上に出た瞬間、そんなことはどうでもよくなった。谷を白煙が埋めて、エキゾーストが木々に跳ね返っている。2025年9月末、D1グランプリ第5戦と第6戦。僕らにとって初めてのD1で、デビューの舞台がエビスなんて、贅沢すぎる。

トップの写真の男が、このシーズンをまるごと持っていった。Team TOYO TIRES DRIFTの66号車GR86、藤野秀之。コースの頂上に白煙を置いていくところだ。

【豆知識】エビスは「サーキット」じゃなくて「山」である

福島・エビスサーキットのD1コースを斜面の上から見下ろす。谷に白煙が溜まる
福島・エビスサーキットのD1コースを斜面の上から見下ろす。谷に白煙が溜まる

ドリフトイベントをやるサーキットはいくらでもある。でもエビスは、ドリフトそのものだ。福島県の山を切り開いて作られ、何十年も前から横向きで走る人たちの巡礼地になってきた。

ポイントは、エビスがひとつのコースじゃないこと。短くてテクニカルなコースがいくつも山肌に段々に積み重なっていて、観客席の土手はほとんどアクションの真上にある。D1のレイアウトは下りから高速の進入へ飛び込む形で、コンクリートウォールがすぐそこ。壁まであと何センチか、土手からはっきりわかる。尾根にはスポンサーの旗、谷には白煙、音は木々に反射して戻ってくる。こんな場所、ほかにはない。

その近さを、一切アクセルを抜かずに攻めるとこうなる。川畑真人、エビスの進入をノーリフトで。

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【結論から】藤野が勝ち、蕎麦切が勝ち、藤野が王者になった

Fat Five Racing 齋藤太吾の87号車トヨタGRスープラ(A90)が、Team TOYO TIRES DRIFT 藤野秀之の66号車GR86のドアに張りつく
Fat Five Racing 齋藤太吾の87号車トヨタGRスープラ(A90)が、Team TOYO TIRES DRIFT 藤野秀之の66号車GR86のドアに張りつく
壁沿いでTeam TOYO TIRES DRIFT 藤野秀之の66号車GR86を追う、Fat Five Racing 齋藤太吾の87号車GRスープラ
壁沿いでTeam TOYO TIRES DRIFT 藤野秀之の66号車GR86を追う、Fat Five Racing 齋藤太吾の87号車GRスープラ

週末は9月27日(土)と28日(日)。土曜の第5戦は、単走で蕎麦切広大がトップ、追走で藤野秀之が優勝。藤野は準決勝でルーキー中村龍のピンクの76号車S13を、決勝で蕎麦切を倒した。日曜の第6戦は立場が逆転して、単走は松山北斗、追走トーナメントは蕎麦切が制した。そして藤野は2JZを積んだ66号車GR86で2025年のシリーズチャンピオンを獲得。自身3度目のD1タイトルだ。

その藤野にドアをこすりつけんばかりに迫っている赤いクルマは、それ自体がもう伝説。Fat Five Racing 齋藤太吾の87号車トヨタGRスープラで、こちらも2JZ。齋藤はこのスープラを第5戦、つまりここエビスで投入した。2012年にはアメリカのフォーミュラ・ドリフトで王者になっていて、フルカウンターでここまで絵になる人はそうそういない。ちなみにこの年の夏、ポーランドのULTRACE 2025では齋藤の日産ローレルがヒーローカーとして展示されていた。海外でもこの人は別格だ。

齋藤のクルマたちがふだん暮らしている場所も見てきた。クリスマスにガレージへお邪魔した話はこちら:ファットファイブ・レーシングのクリスマスBBQ。

第5戦・2025年9月27日(土)

追走

順位No.ドライバー車両
1#66藤野秀之トヨタGR86
2#31蕎麦切広大トヨタGR86
3#76中村龍日産シルビアS13
4#99中村直樹トヨタGR86
5#87齋藤太吾トヨタGRスープラ
6#9粂哲也日産シルビアS15
7#2田中省己日産シルビアS15
8#81和田賢志郎日産シルビアS15

決勝は、進入での距離の差で藤野が蕎麦切を下した。準決勝は、藤野が中村龍に勝利(中村龍は再走で接触)、蕎麦切はドライブシャフトが折れてスピンした中村直樹のGR86に勝利。齋藤太吾の単走3位は、スープラのデビュー週末での結果だ。

単走 トップ5

順位No.ドライバー車両得点
1#31蕎麦切広大トヨタGR8698.77
2#76中村龍日産シルビアS1398.49
3#87齋藤太吾トヨタGRスープラ98.42
4#99中村直樹トヨタGR8698.42
5#70横井昌志日産シルビアS1598.29

第6戦・2025年9月28日(日)

追走

順位No.ドライバー車両
1#31蕎麦切広大トヨタGR86
2#99中村直樹トヨタGR86
3#90山中真生トヨタGRスープラ
4#18日比野哲也トヨタGR86
5#88川畑真人トヨタGR86
6#66藤野秀之トヨタGR86
7#9粂哲也日産シルビアS15
8#80田野結希トヨタGR86

決勝は蕎麦切が中村直樹を下した。準決勝は中村直樹が山中に、蕎麦切が日比野に勝利。

単走 トップ5

順位No.ドライバー車両得点
1#77松山北斗トヨタGRカローラ99.38
2#70横井昌志日産シルビアS1598.16
3#31蕎麦切広大トヨタGR8697.94
4#90山中真生トヨタGRスープラ97.90
5#88川畑真人トヨタGR8697.85

エビスを終えた時点のランキング首位は蕎麦切。藤野、横井、目桑宏次郎が続いた。藤野は11月のお台場最終戦でタイトルを奪い返している。結果はD1コーポレーション公式の第5戦・第6戦レポートより。

【ピンクのS13】ルーキー中村龍が暴れた週末

D-MAX Racing Team 横井昌志の70号車、赤い日産シルビアS15と、VALINOがサポートする中村龍の76号車、ピンクのシルビアS13の追走
D-MAX Racing Team 横井昌志の70号車、赤い日産シルビアS15と、VALINOがサポートする中村龍の76号車、ピンクのシルビアS13の追走
白煙の中、中村龍の76号車ピンクの日産シルビアS13とTeam TOYO TIRES DRIFTのGR86
白煙の中、中村龍の76号車ピンクの日産シルビアS13とTeam TOYO TIRES DRIFTのGR86

結果表を見ればわかるとおり、第5戦の主役の一人はピンクのS13だった。単走2位、追走3位。D-MAXの横井昌志の赤い70号車S15と並んで壁際を行く姿も、TOYO TIRESのGR86と白煙の中に消えていく姿も、とにかく目立つ。最新のGR86やスープラがずらりと並ぶ中で、S13がこれをやるのが痛快なんだよね。

【パドック】エンジンまで1メートル

鷲柄のテントの下、Drift Star Racing 土居雅和の98号車日産シルビアS13。奥にハタナカ・ユメトの75号車トヨタ・チェイサーJZX100
鷲柄のテントの下、Drift Star Racing 土居雅和の98号車日産シルビアS13。奥にハタナカ・ユメトの75号車トヨタ・チェイサーJZX100
ボンネットを開けた、ルーキー イナオカ・タクヤのVehiql Racing × VALINO 8号車日産180SX
ボンネットを開けた、ルーキー イナオカ・タクヤのVehiql Racing × VALINO 8号車日産180SX

パドックは、エビスに来る理由の半分だ。チームのテントはクルマに向かってそのまま開いていて、ダイナモのシートでもまず見ないような馬力のエンジンから1メートルのところに立てる。鷲柄のテントの下にはDrift Star 土居雅和の98号車S13、その奥にチームメイト、ハタナカ・ユメトの75号車チェイサーJZX100。ルーキー、イナオカ・タクヤのVehiql Racing × VALINO 8号車180SXはボンネット全開だった。

Team TOYO TIRES DRIFT 玉城詩菜の14号車トヨタ86に積まれた、GT-R用の日産VR38DETT V6ツインターボ
Team TOYO TIRES DRIFT 玉城詩菜の14号車トヨタ86に積まれた、GT-R用の日産VR38DETT V6ツインターボ

そしてTeam TOYO TIRES DRIFTのテントで二度見したのがこれ。ルーキー玉城詩菜の14号車トヨタ86のエンジンルームに収まっているのは、日産VR38DETT。そう、GT-RのV6ツインターボだ。トヨタの86に日産の心臓。海外の掲示板なら炎上しそうな組み合わせだけど、ここではそれが「速いから正解」で済んでしまう。

【コラム】JZXは死なず。マークII一族はいまもドリフトの魂

ファンに囲まれる、Team BuzzBreak イシイ・リョウの50号車トヨタ・マークII JZX100
ファンに囲まれる、Team BuzzBreak イシイ・リョウの50号車トヨタ・マークII JZX100
グリッドに並ぶ、Team TNR Lovca 中田哲郎の30号車トヨタ・マークII JZX100
グリッドに並ぶ、Team TNR Lovca 中田哲郎の30号車トヨタ・マークII JZX100

トヨタのデカい4ドアは、いまもあちこちにいる。BuzzBreakのイシイ・リョウの50号車も、Team TNR Lovca 中田哲郎の赤い30号車も、どちらもマークII JZX100。ハタナカはチェイサーJZX100で戦っている。

モティーズのタワーの下に停まる、オレンジのドリフトタクシー、トヨタ・マークIIグランデ JZX110
モティーズのタワーの下に停まる、オレンジのドリフトタクシー、トヨタ・マークIIグランデ JZX110

セッションの合間に同乗走行をしていたオレンジのドリフトタクシーも、JZX110のマークIIグランデだ。20年たっても、マークII一族は日本のドリフトの魂であり続けている。海外のファンがJZXを「ドリフトの正装」みたいに崇めるのも、ここに来ると納得するしかない。

【整列】追走前の緊張感

追走前の整列。Team BuzzBreak イシイ・リョウの50号車マークII JZX100、Miyaseimitsu サイトウ・ヒサシの38号車S15、Drift Star 土居雅和の98号車S13
追走前の整列。Team BuzzBreak イシイ・リョウの50号車マークII JZX100、Miyaseimitsu サイトウ・ヒサシの38号車S15、Drift Star 土居雅和の98号車S13
スタートへの列を先導するD-MAX Racing Team 和田賢志郎の81号車日産シルビアS15。後ろにTeam TOYO TIRES DRIFTのGR86
スタートへの列を先導するD-MAX Racing Team 和田賢志郎の81号車日産シルビアS15。後ろにTeam TOYO TIRES DRIFTのGR86

整列の先頭はBuzzBreak イシイ・リョウの50号車マークII。その後ろにワンオフの4ロータリーを積むMiyaseimitsu サイトウ・ヒサシの38号車S15、さらに星条旗カラーの土居雅和98号車S13。4ロータリーのS15が普通に並んでいる時点で、もうおかしい(褒めてます)。もう一枚は、スタートへ向かう列を引っ張るD-MAX 和田賢志郎の81号車S15と、その後ろのTOYO TIRES勢のGR86たち。

【夜の部】日が沈んでもピットは眠らない

作業灯の下、Team TOYO TIRES DRIFTのクルーが整備する川畑真人の88号車トヨタGR86
作業灯の下、Team TOYO TIRES DRIFTのクルーが整備する川畑真人の88号車トヨタGR86
テントの中のTeam TOYO TIRES DRIFT 松山北斗の77号車トヨタGRカローラ
テントの中のTeam TOYO TIRES DRIFT 松山北斗の77号車トヨタGRカローラ

太陽が尾根の向こうに落ちても、作業は終わらない。作業灯の下で足回りを組み直し、タイヤを替える。TOYO TIRESは川畑真人の88号車GR86と、第6戦の単走を取った松山北斗の77号車GRカローラ。

シバタイヤのテントの下、Team Vertex 上野高広の78号車レクサスRC
シバタイヤのテントの下、Team Vertex 上野高広の78号車レクサスRC

Team Vertexは、2JZを積んだ上野高広の78号車レクサスRC。ギャラリーの後半はあえて無加工にしてある。この週末を、起きたままの姿で見てほしいから。

【まとめ】まだ行ったことがないなら、次はエビスへ

D1は、日本のドリフトがストリートのカルチャーからプロスポーツに変わった場所。そしてエビスは、そのカルチャーがいまでも原点にいちばん近いと感じられる場所だ。モータースポーツ目当てで旅の予定を立てるなら、エビスのD1をリストの一番上に。持ち物は望遠レンズ、モバイルバッテリー、そして山を登る根気。最後のひとつは、僕らみたいに運動不足の人ほど大事だ。

写真:One Breath Pictures

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