頭上の標識には「MAXIMUM 40 km/h」「AREA / SECTEUR」「ENDS / FIN」。英語とフランス語の併記で、これ以上ないくらいカナダらしい標識だ。で、その下にいるのは、これ以上ないくらい日本らしいクルマ。右ハンドルの白いトヨタ・マークII JZX100。日本向けに作られ、カナダでは正規に売られたことがない。僕らの投稿キャプションでは、これをマークII ツアラーVと呼び、「いちばんきれいな部類の一台」と書いた。オタワの空がピンクになっていくなか、あらゆる角度から撮り終えたいま、その言葉を撤回するつもりはない。
【なぜオタワに?】カナダの「15年ルール」
日本の読者がまず気になるのは、たぶんここだろう。カナダでは、製造から15年たったクルマなら個人で輸入できる。国境の南、アメリカの「25年ルール」より10年も早い。JZX100にとってその扉はとっくに開いていて、いまではオンタリオ州やケベック州に、右ハンドルのトヨタのセダンを愛する小さくて熱いコミュニティができている。カナダのナンバーを付けて、カナダの冬と戦いながら。日本で「おじさんセダン」として生まれたクルマが、雪国の首都で大事にされている。なんだかうれしい話だ。
【おさらい】JZX100マークIIってどんなクルマ?
- 名前のルーツ:1968年のコロナ・マークII
- JZX100:8代目、1996〜2000年
- 兄弟車:スポーティなチェイサー、フォーマルなクレスタ
- みんなが欲しいグレード:ツアラーV(2.5リッター1JZ-GTEシングルターボ直6、VVT-i、当時の国産車おなじみの280PS)
- ミッション:5速MTも選べた
マークIIは、トヨタが日本向けに作ったミドルサイズのFRセダン。4ドア、FR、ブーストをかけるほど応えてくれるターボ直6、そしてMT。この組み合わせがあったからこそ、JZX100はサラリーマンのクルマからドリフトのアイコンに化けた。そして同じ理由で、いじられていないきれいな個体は日本でもどんどん見つからなくなっている。
【ここがシブい】この個体のディテール


リールは3つの動く映像を縦に重ねた構成なので、どの静止画にもクルマが3通りに写っている。前から後ろまで、僕らが見たものはこうだ。
- 車高:タイヤにかぶさるくらい低く、ホイールはフェンダーにぴったり収まる
- ホイール:多ピースのリムに2本ずつのスポーク、ポリッシュのリム、ピアスボルトの並ぶリム、赤いセンターキャップ
- エアロ:大きな開口部の奥にインタークーラー風のコアが見える社外フロントバンパー、サイドステップ、1本出しの深いリアバンパー
- ライト:純正のマルチリフレクターヘッドライトと、マークIIおなじみの全幅テール。どちらもピカピカ
- 室内:運転席に黒いブリッドのバケット、右側に深めの社外ステアリング、シートの間にMTのシフトレバー
今回ボンネットは開けていない。だからエンジンについては、キャプションどおり「ツアラーV」というところまでにしておく。言えるのは、オーナーがいちばん難しいこと、つまり「やりすぎない」ことをやってのけたということ。リバリーなし、巨大ウイングなし。白い日本のセダンを低く、ワイドに見せて、シャープにしただけ。これぞ大人のチューニングだ。
【まとめ】横を向かなくても、主役
こういうクルマが本来いるべき場所で走る姿は、OGAと1320videoのトヨタ・マークII JZX100 峠ナイトで。兄弟車の音ならトヨタ・チェイサーJZX100 ツアラーVのクリップをどうぞ。このマークIIは、僕らの前では一度もケツを流さなかった。その必要もなかった。日が落ちていくなか、2か国語の標識の下に停まっていたこのクルマが、その日のオタワでいちばんのおしゃれさんだった。
写真・動画:One Breath Pictures

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