探しに行って見つけるクルマもあれば、向こうが待っててくれるクルマもある。公園でたった一本、ちょうど満開になっていた桜の木の下で。
この春、僕らが向かったのはニュージャージー州クラーク。Grassroots Editionの春のミーティングだ。いつもの東海岸ミックスだろうな〜なんて思ってたら、芝生の端っこにいたんだよね。日本のナンバーを付けた白いR32スカイライン。ボディサイドには「Tommy Kaira」の文字、ボンネットにはピンクの花びらがひらひら。ほんの数分だけ、アメリカ郊外の公園が4月の京都に見えた。海外組の僕らが「京都っぽい」なんて言うのもおこがましいけど、そう見えちゃったんだからしょうがない。
【豆知識】トミーカイラは京都の名前なのだ
トミーカイラは京都のチューニングハウス。創業は1980年代で、社名は創業者ふたりの名前から来ている。トミタ・ヨシカズ(通称「トミー」)と、カイラ・キクオ。トミー+カイラで、トミーカイラ。
80年代後半から90年代にかけて、日本でもっともリスペクトされたロードゴーイング・スカイラインのいくつかを生み出したのがここ。パーツを箱で売るショップじゃない。R32やR33のスカイラインを、専用ボディ、エンジンチューン、内装までまとめて仕立て、メーカー並みの仕上がりの「完成車」にしていたのだ。
作られた台数は少なく、日本の外に出ることはめったにない。だから故郷から1万1000キロ離れた芝生の上で1台見つけたら、そりゃ足も止まるっしょ。
【ここがシブい】白いR32のディテール
近くで見るR32は、静かなディテールのかたまりだ。サイドに走るトミーカイラのロゴ、その下をフロントからテールまで追いかける細い赤のピンストライプ。フロントバンパーとリップは同社オリジナルのデザインで、知ってる人なら一発でわかるやつ。そして日本のナンバー。この小さな四角い書類が「このクルマの物語は、よそで始まったんだよ」と語っている。
後ろに回ると空気が変わる。大きなリアウイングと、チタンテールのマフラー。走るために作られたクルマの、本気の部分だ。そしてルーフにも、ボンネットにも、ワイパーにも、花びら。誰かが並べたわけじゃない。こういうディテールは仕込めない。その場に居合わせるしかないのである。
【背景にゴジラ】赤いR34と黒っぽいGT-Rもそろい踏み
スカイラインはこの1台だけじゃなかった。横には赤いR34、すぐ後ろには黒っぽいGT-R。だからどこから撮っても、背景にゴジラが写り込む。日本でいちばん有名な車名の三世代が、日本の木の下、ニュージャージーの芝生に勢ぞろい。
こんな光景が成り立つのは、アメリカの「25年ルール」のおかげ。日本のクルマは25年経てばアメリカに輸入できる。そのおかげで東海岸は、いつの間にか日本以外でレアなスカイラインに会える最高の場所のひとつになった。スカイラインの家系図をまるごとたどりたいなら、まずは東京のスカイライン特集から。そのあとR32とR34のページへどうぞ。
【イベント情報】Grassroots Editionってどんな集まり?
Grassroots Editionは、アメリカ北東部のカーショーシリーズ。招待制のショーケースと、SNSでの厚いフォロワーが持ち味だ。ホームグラウンドはクラークのThe Course at Oak Ridge Park。春のSeason Openerは、ここでPRIMENYC.COと一緒にキュレーションしていて、主催者いわく「自然と機械の極みが織りなす、壮大なコントラスト」。
秋になるとシリーズは場所を移す。ヨーロッパ車のためのEuropean Vacationエディションの会場は、ニュージャージー州ウェストミルフォードにある歴史ある農場、Wallisch Homesteadだ。
出典:TheFOATのGrassroots Edition: Season Opener 2026、AutoblogによるGrassroots Edition: European Vacationの取材記事。写真:One Breath Pictures。
【編集後記】桜の一週間に、居合わせた
カーショーはたいてい、いいクルマを100台見せてくれる。でもたまに、たった一つの瞬間をくれることがある。正しいクルマが、正しい木の下に、一年でその一週間だけ花が咲く時期に。今回はまさにそれだった。春に東海岸にいるなら、Grassrootsのカレンダーはチェックしておこう。そして芝生を歩くときは、ちょっとだけ上を見上げてみて。







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