ULTRACEみたいなショーで「あ、これは特別だ」とわかる瞬間がある。周りの人がコンクリートにひざをつき始めたときだ。このクルマの周りでは、カメラマンが植え込みにへばりつくようにしゃがんでレンズを構え、その後ろで十数人がスマホで動画を回し、横からも何人かが身を乗り出してリアウイングをフレームに入れようとしていた。主役は深い紫のフェラーリ360。僕らはこれをフェラーリ360 N-GTとして投稿した(キャプションは「F360 N-GT」、その上にスピーカーの絵文字が3つ)。
【結論から】キャプションは「N-GT」。でも断定はしない
先に大事なことを。この360 N-GTという呼び名は、僕らのキャプションが言っていることだ。オーナーから車両の来歴は聞けていない。だから、元チャンピオンシップ参戦車なのか、ワンメイクのチャレンジカーをN-GT仕様にアップデートしたものなのか、それとも公道用の360をその仕様に仕立てたものなのか、ここでは言えないし、当てずっぽうも言わない。確かなのは、公道登録されていること。そして見た目は、どこからどう見ても「本物っぽかった」ということだ。
【豆知識】360 N-GTってなに?
- ベース:1999年登場の360モデナ。アルミシャシーに3.6リッターV8のミッドシップクーペ
- 兄弟:ロードカー、ワンメイクレース用のチャレンジ
- N-GT:イタリアのレーシングカー・コンストラクター、ミケロット(Michelotto)が開発したGTレース仕様
- 舞台:2000年代前半のFIA GT選手権、N-GTクラス
- 中身:固定ウイング、スパルタンな室内、クイックフィルの給油システム。ガチのレーシングマシンだ
【ここがヤバい】僕らが見た紫の360
撮ったのは後ろの少し高い位置から。ほとんどの観客が見ていたのと同じアングルだ。足しも引きもせず、見たものだけ並べる。
- カラー:日陰ではほぼ黒に見える、深いメタリックパープル
- ウイング:背の高いステーに載った大型の固定ウイング。テールの幅いっぱい
- ストライプ:緑・白・赤のイタリアン・トリコローレが、ルーフからエンジンフード、テールパネルまで
- エンジンフード:通気用の切り欠きが入った透明パネル。V8がのぞける
- 給油口:サイドウインドウ後ろのリアクォーターに、丸いクイックフィルのキャップ
- ホイール:金のマルチスポーク
- マフラー:360おなじみの丸い2本出しが左右に
- ナンバー:ドイツ登録で、右側に小さく「04」と「10」。つまり季節ナンバーで、公道を走れるのは4月から10月まで
【なぜ刺さった】ULTRACEの中のイタリアン
ULTRACEは2025年6月末、ヴロツワフのTarczyński Arenaを囲んで開かれた選抜型のショー。数千台の応募から1000台近くが選ばれる仕組みで、詳しくは僕らのULTRACE 2025 ヴロツワフレポートで書いた。会場の大半はチューニングされた日本車とドイツ車。そこに金ホイールの紫のイタリアン・レーサーがいれば、フェラーリのオーナーズミーティングにハコスカが紛れ込んだくらい目立つ。しかも仲間もいた。同じ週末には、Judd V8を積んだ元ゲオルク・プラザのBMW E36 M3という、なぜかショーカーに混ざったもう一台のレーシングカーがいたし、アートカーや街道レーサーはULTRACE 2025の絵はがきにまとめてある。
【編集後記】ロープなしのレーシングカー
カーショーのレーシングカーは、たいていロープで囲われて黙っている。この一台は、ウイングに手が届きそうな距離に人がいる、むき出しの場所に停まっていた。こういうクルマを見るには、それがいちばんだ。もし本当にレース用の360なら、この世代でもっとも希少なフェラーリの一台ということになる。それが、ポーランドで竹の植え込みから数メートルのところに停まっていたわけだ。
写真・動画:One Breath Pictures


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